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打たせ湯の男 1話栃木県那須郡の塩原温泉に、不動の湯と呼ばれる温泉がある。東北自動車道から国道４００号をひたすら走り、ようやくたどり着く秘湯である。「やっぱり恥かしいよ…」由希は身体に巻いたタオルの胸元を引き上げ、顔を赤らめた。「まあしかし、混浴もいい経験だろ」由希と並んで脱衣場を出た京沢はそう言って笑う。二人は高校の教師と生徒という関係だが、来年、由希の卒業を待って結婚する予定となっている。が、昨今では珍しくまだキスさえしたことがない。山中の細道を降りると、岩に囲まれた露天風呂に行き着く。そこには先客がいた。若い男が一人、名物の打たせ湯に後頭部を打たせて、湯の中にじっと座っている。打たせ湯は頭上のパイプから勢いよく流れ落ちている。二人は遠慮して、男から少し離れた位置に身を沈めた。「おうい」短髪の若い男が、細道を降りてやってきた。「なかなかいい温泉じゃん」彼は打たせ湯の男に手を振って近づく。打たせ湯の男は立ち上がり、首をうなずかせてそれに応えた。「知り合いみたいね」由希がささやく。「だね」京沢はうなずいた。
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打たせ湯の男 1話栃木県那須郡の塩原温泉に、不動の湯と呼ばれる温泉がある。東北自動車道から国道４００号をひたすら走り、ようやくたどり着く秘湯である。「やっぱり恥かしいよ…」由希は身体に巻いたタオルの胸元を引き上げ、顔を赤らめた。「まあしかし、混浴もいい経験だろ」由希と並んで脱衣場を出た京沢はそう言って笑う。二人は高校の教師と生徒という関係だが、来年、由希の卒業を待って結婚する予定となっている。が、昨今では珍しくまだキスさえしたことがない。山中の細道を降りると、岩に囲まれた露天風呂に行き着く。そこには先客がいた。若い男が一人、名物の打たせ湯に後頭部を打たせて、湯の中にじっと座っている。打たせ湯は頭上のパイプから勢いよく流れ落ちている。二人は遠慮して、男から少し離れた位置に身を沈めた。「おうい」短髪の若い男が、細道を降りてやってきた。「なかなかいい温泉じゃん」彼は打たせ湯の男に手を振って近づく。打たせ湯の男は立ち上がり、首をうなずかせてそれに応えた。「知り合いみたいね」由希がささやく。「だね」京沢はうなずいた。
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