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4話

真っ赤になって俯く鳴海さんを見て、僕はかわいいと思ってしまう。でも、もうすぐ異動だ。それに鳴海さんは上司で僕より14も年上でその上おたくでおっちょこちょいで。僕はしみじみと関係を思い返す。そして驚いたことに、いつも自分が鳴海さんを追っていたことに気づいた。ぜんぜん恋愛対象じゃなくて、なんだかできの悪いペットでも持ったような気持ちだったのに。耳まで真っ赤にして僕を避ける鳴海さんを見ると、こっちまでどきどきしてしまう。かわいいだけだと思っていたのに、どうして心臓が早いんだろう。僕の送別会で、鳴海さんはしこたま呑んだ。べろんべろんに酔っ払って、ひとりで歩けないくらいになる。しかたなく僕がつきそってあげる。鳴海さんはまなじりを真っ赤にして涙目で僕をなじる。「どうして行っちゃうのよ」文句があるのなら僕じゃなくて人事にいってほしいのだけど。酔いつぶれた鳴海さんを抱きかかえるようにして、店を出る。きっともう終電もない。肩をささえる鳴海さんは「眠い」とわがままだ。「じゃあホテル行きますか?」僕が提案すると、こくりと頷く。だけどまだ僕はそのままなにも起こらない自信があったんだ。鳴海さんは上司だし。

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