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ラブホテル物語
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2話

「坂下先輩、そんなに動かないでください」頭の上にかかった吐息とともに、その声の主には覚えがあった。ようやく自分を抱きしめる腕の主を見つめる。「か、か、加藤!」私の素っ頓狂の声に、加藤はびっくりしたように目を丸くした。その顔は会社でよく見る、私に注意されるために呼び止められた時の表情と同じだ。一瞬、顔つきだけはふたりとして会社モードに戻るが、身体は相変わらず全裸で密着しているという間抜けな状況。「離しなさいよ!」私は顔を真っ赤にして加藤の腕の中で暴れる。しかし、あっさり離してくれるものと思っていた加藤の腕はしっかりと抱きしめたまま動かない。「だって、離さないでっていったのは坂下先輩ですよ。だから、僕はずっと一晩中抱きしめたんですから」そういいながら加藤の顔も赤くなる。つまり、抱きしめただけじゃなくて抱いていたという事実を思い出したというわけだ。「どういうことなの?」私はふとんに沈み込みながら、顛末を聞く。すると、加藤は傷ついた顔をして私を悲しそうに見つめてきた。「覚えてないんですか?」その言葉に胸が痛んだけれど、緊急事態なんだからそこは無視だ。「そうよ、覚えてないのよ。だから教えて」

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