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ラブホテル物語
海水浴ラブホテル
2話

女は身体をよじると、咳き込みながらよだれとも海水ともわからないものを、しばらく吐き続ける。俺はその背中が一生懸命にさすった。「いったい、なにやってんだよ。服を着たまま海に入るなんて、自殺でもする気か!?」俺はようやく唇に色が戻ったのを見た瞬間にそう怒鳴る。今までの緊張が解けて、思わず腹立たしさにおそわれてしまったのだ。俺の剣幕に推されたのか、女は今度は大粒の涙を流し始める。しょっぱい潮水に、しょっぱい涙で大洪水状態だ。これでは、すっかり形成が逆転して俺が悪者みたいじゃないか。「とにかく、そのままじゃどうしようもねえだろ。どうやってここまで来たんだよ。車かなんか置いてるのか?着替えはあるんだろうな」俺が乱暴に続けると、女は黙ったまま腕をあげて、左の方向を指差した。そっちの方向には朝日に照らされて燦然と輝くラブホテルがそびえている。「おまえ、ラブホテルに泊まっていたのかよ」俺があんぐりした口で問うとコクリと頷く。それがどうして、こんな朝早くに服を着たまま、海に向かって歩いて行ったのかは謎だ。どうせ、ろくな理由じゃないだろう。「じゃあ、歩いて帰れるな。俺はもう行くぜ」俺はそう言うと、立った。

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