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ラブホテル物語
海水浴ラブホテル
5話

女はそれで自棄になって海へと歩いていたのだ。俺は「そんな男など、忘れてしまえ。死ぬほどの価値もない」と言い捨てる。すると女も「本当に」とふっきれたように笑んだ。やっと笑ったと思うと、胸がずぐんと鳴る。と、女がまた震え始める。室温設定が寒いのかとリモコンを探すが、女は俺の腕を取ると首を振った。「体が寒いんじゃない。心が寒いの。さびしくて、さびしくて心が凍りそう」そういうと女は俺に腕に落ちてきた。ああ、運命なんだ。俺は命をすくった女をしっかりと胸に抱きしめる。そして、人工呼吸ではない口付けを交わした。まだ小刻みに震える身体を押し倒して、包み込むように組み敷く。女は抵抗しない。ただ、喉を震わせて嗚咽のような歓喜の声を出す。「あなたの熱が熱い」女は体の奥に俺を受け止めながら、溜息のように呟く。「おまえの中はもっと熱い」そうささやくと、女は頷いた。「生きてるのね」そう返されて、俺の熱がもっと大きくなる。「うっ」と女が呻いた。濡れながら、引きしぼらるように熱を奪われていく。生きていることを知らせる歓喜の渦が俺にも女にも訪れていた。これは俺の女だ。俺がもらった命だという気が胸を熱くする。

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