ラブホテル物語
凶暴ガールラブホテル1話:かかと落とし
彼女が凶暴だと思った時には､もう僕は魔の手に落ちていたのかもしれない｡パンツスーツに身を包んで颯爽と歩く彼女に向かって､すっかり男の子だと思っていた僕は暴挙に出てしまう｡女子トイレに入ろうとする彼女に｢あ､佐々木君､そっちは男子トイレだから間違っているよ｣と思いっきり満面の笑顔で言ってしまった｡佐々木というネームプレートは見慣れていた｡しかし､名前までは書いていないから､そこでも僕は彼女を男の子と勘違いしていたんだ｡｢私は女じゃあぁっ!!｣そう言うと､彼女は僕にかかと落としをくらわせたのだ｡その突然の暴力と痛さは人生未踏のものだった｡だから､その場にぶったおれて､しばし気絶したのは許してもらいたい｡気がつくと､会社の医務室に寝かされている｡横では彼女がうたた寝をしていた｡無防備に半分開いたくちびるは､ぽってりとしていて桃色｡よく見れば､薄く化粧だってしている｡どうして､僕は彼女を男だと思ってしまったんだろう｡そりゃあ､髪は短いし､パンツスーツばかりではあったけれど｡髪だって､短いけれどふわふわとしてやわらかそうだ｡つい､くしゃっと寝ている彼女の髪に指をからませる｡気持ちいい触り心地｡
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