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愛だけのラブホ
5話:愛だけ

竹下は有無を言わさずに後ろから腰を抱きしめてきた。「忘れられません。里美しかいないんだ」力強く抱かれるうちに、里美は自分の中で頑なだったものが溶け出すような気がしていた。ずっと抑えていたものが一気にあふれだす。竹下をほしいと思った。キスしたい。髪をなでたい。指をからめあいたい。耳を噛みたい。その体にもっと触れたい。じかに触れたい。服を通してしか触れないことがもどかしい。もしかしたら、それが体を合わせるという本当の意味かもしれない。子供を作るためのセックスじゃなくて、相手の形や熱を感じるためだけのセックスがあってもいいはず。そう思っていたから、竹下がラブホテルに誘われた時、こくんと頷いたのだ。部屋に入ってからのことはよく覚えていない。ただ、ひたすらに竹下の熱を求めた。何度も何度も求められたし、里美からも求めたと思う。ただ、愛を確かめ合うためだけに。ただ、そこに命があるということを実感するために。体がひとつになるたびに、何かが生まれていくような気がしたのは里美の気のせいだろうか。けれど、空しいと思っていたことが、そうではなく充実感を深めていくことがうれしくてたまらなかった。愛があるから。

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