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ラブホテル物語
![]() 1話:絵描き 公園で絵を描くあの人を初めて見たのは三か月前だった。私の勤めているオフィスは大きな公園に面したビルに入っている。だから窓からいつもあの人の絵を描く姿が見えた。見ているだけでひと月が過ぎた。次のひと月はお昼にお弁当を作って、なるべく近くのベンチに座って、ぼんやりと絵描きの人を見つめて過ぎた。そして、三ヶ月目に入った時、思いがけないチャンスが訪れる。絵描きの人の画用紙が風に飛ばされて、私の足元に落ちたのだ。急いで拾うと彼がやってきて、「すいません」と頭をさげて私の差し出した画用紙を受け取る。にこっと笑った顔は想像以上に優しそうだった。いつも芸術家らしく、きりりと引き締まった顔ばかり見ていたからだろうか。笑顔に胸がどきんと高鳴った。「あの、いつもここで絵を描いてますよね。絵描きさんなんですか?」私は思い切って声をかけてみた。私の言葉に彼は一瞬びっくりしたような顔をしたけれど、またにっこりと笑って、飛ばされた画用紙にサインをさらさらっと描いてくれる。「城崎シローって言うんだ。一応、そこそこ売れてるんだけど、知らないよね」「すいません。あまり芸術にくわしくなくて」それが初めてのコンタクト。 『絵描きとラブホテル』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]()
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ラブホテル物語![]() 1話:絵描き 公園で絵を描くあの人を初めて見たのは三か月前だった。私の勤めているオフィスは大きな公園に面したビルに入っている。だから窓からいつもあの人の絵を描く姿が見えた。見ているだけでひと月が過ぎた。次のひと月はお昼にお弁当を作って、なるべく近くのベンチに座って、ぼんやりと絵描きの人を見つめて過ぎた。そして、三ヶ月目に入った時、思いがけないチャンスが訪れる。絵描きの人の画用紙が風に飛ばされて、私の足元に落ちたのだ。急いで拾うと彼がやってきて、「すいません」と頭をさげて私の差し出した画用紙を受け取る。にこっと笑った顔は想像以上に優しそうだった。いつも芸術家らしく、きりりと引き締まった顔ばかり見ていたからだろうか。笑顔に胸がどきんと高鳴った。「あの、いつもここで絵を描いてますよね。絵描きさんなんですか?」私は思い切って声をかけてみた。私の言葉に彼は一瞬びっくりしたような顔をしたけれど、またにっこりと笑って、飛ばされた画用紙にサインをさらさらっと描いてくれる。「城崎シローって言うんだ。一応、そこそこ売れてるんだけど、知らないよね」「すいません。あまり芸術にくわしくなくて」それが初めてのコンタクト。 『絵描きとラブホテル』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]() #次のページ ![]() ![]() ![]() ![]() |