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絵描きとラブホテル
4話:発熱

ダメ元でいつものベンチまで歩いて行くと、そこには城崎さんがずぶ濡れで立っていた。「城崎さん!」慌てて駆けよると、傘をさしかける。すると城崎さんはにっこりと笑って、「よかった。もう来ないかと思った」とつぶやいた。グラリと城崎さんの体が傾く。あわてて支えるように抱きしめた城崎さんの体は、冷たい雨に濡れているのにものすごく熱い。「熱が出てますよ」「そうかな?道理で、くらくらすると思った。てっきり、美紅さんのことを考えてるからだと思ってたんだけど」冗談っぽく軽口を叩くけれど、まっすぐに体を起こせないらしい。どうしよう。ここから近いところって……。あたりを見回すと、公園に隣接しているラブホテルが目に入る。この場合、背に腹は代えられない。「あそこで休憩しましょう」私は城崎さんの肩を抱くようにして歩き始めた。城崎さんは事態がわかっているのか、わかっていないのか、素直に従ってくれる。ラブホテルの部屋に入り、とにかく濡れた服を脱いでもらった。ホテルに備え付けてあるガウンを着せて、おふとんの中に入ってもらう。城崎さんは顔を赤くしたまま、潤んだ瞳で私を見上げて言った。「世話をかけてごめんね」「いいえ」。

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