XHTML版 | HTML版 | DebugString | ||
ラブホテル物語
![]() 1話:襲われて 「はっ、はっ、はっ、はっ」林をかけぬけているうちに、もう自分がどこにいるのかがわからなくなっていった。とにかく、少しでも遠くに逃げたかった。もしかして今、元きた道に戻っているんじゃないかという不安が胸をかすめる。とにかく、ここがどこかを確かめなくては!そう思って足を止めた途端に、ずるりと足元がすべった。ずささささーっとそのまま泥の斜面をすべりおちていく。「きゃああああ」悲鳴をあげても止まるはずがなく、そのまま平らな部分まですべりきった。そこで、強い光に照らされた。落ちた先が道路だったらしい。キイィィッと鋭いブレーキの音。ヘッドライトがまるで襲いかかるように目の前まできて、ぎりぎりのラインで止まった。ピクリとも動けず、腰を抜かしたままそのライトをまぶしげに見つめる。車から人が降りてきた。まずい、さっき襲ってきた相手だとしたら、今度こそつかまってしまう。身をすくませる私に差しのべられたのは、温かな手だった。シルエットしか見えなかったその人を、私はあしながおじさんかと思った。「君、大丈夫?」シルクハットではないけれど、燕尾服の影。素直にその手をとったのは夢のように思ってたからかもしれない。 『シャトーラブホテル』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]()
※前のページ
#次のページ ![]() ![]() ![]() ![]() |
ラブホテル物語![]() 1話:襲われて 「はっ、はっ、はっ、はっ」林をかけぬけているうちに、もう自分がどこにいるのかがわからなくなっていった。とにかく、少しでも遠くに逃げたかった。もしかして今、元きた道に戻っているんじゃないかという不安が胸をかすめる。とにかく、ここがどこかを確かめなくては!そう思って足を止めた途端に、ずるりと足元がすべった。ずささささーっとそのまま泥の斜面をすべりおちていく。「きゃああああ」悲鳴をあげても止まるはずがなく、そのまま平らな部分まですべりきった。そこで、強い光に照らされた。落ちた先が道路だったらしい。キイィィッと鋭いブレーキの音。ヘッドライトがまるで襲いかかるように目の前まできて、ぎりぎりのラインで止まった。ピクリとも動けず、腰を抜かしたままそのライトをまぶしげに見つめる。車から人が降りてきた。まずい、さっき襲ってきた相手だとしたら、今度こそつかまってしまう。身をすくませる私に差しのべられたのは、温かな手だった。シルエットしか見えなかったその人を、私はあしながおじさんかと思った。「君、大丈夫?」シルクハットではないけれど、燕尾服の影。素直にその手をとったのは夢のように思ってたからかもしれない。 『シャトーラブホテル』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]() #次のページ ![]() ![]() ![]() ![]() |