ラブホテル物語
幽霊ラブホテル2話:窓のシルエット
哲也は女性のシルエットが見える窓の下から､じっと上を見あげた｡相変わらず､窓には女性が佇んでいる｡黒くて長い髪は艶があり､少し濡れたように光る｡もしかしたら､風呂上がりなのかもしれない｡肌は抜けるように白く､一枚の絵だと言われればそうだと納得してしまうようなろうたけた美しさだった｡思わず声をかけてしまいたくなる衝動が哲也を襲う｡ラブホテルの部屋にいるのだ｡もしかしたら､相手がいるのかもしれない｡そんな女性に声をかけるなど､相当な非常識だと自分でもわかっている｡しかしその時は､常識などけし飛んでしまうほど､その女性に心惹かれていたのだ｡｢あの､あなたは誰ですか?｣かなり間抜けな問いかけをした｡すると､わずかに女性が身じろぐ｡それで､マネキンでも絵画でもないとわかってほっとする｡どこか生身の人間とは思えないところがあったからだ｡とりあえず生身なら､この衝動の行きつく先に可能性が出てきた｡｢すいません｡あの､道に迷ったんですが…｣今度は至極､まともな質問を投げかける｡今度は女性が哲也の方へと顔を向けた｡視線がかち合う｡ああ､なんて美しいのだろう､と哲也は思わずため息を落とした｡
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哲也は女性のシルエットが見える窓の下から､じっと上を見あげた｡相変わらず､窓には女性が佇んでいる｡黒くて長い髪は艶があり､少し濡れたように光る｡もしかしたら､風呂上がりなのかもしれない｡肌は抜けるように白く､一枚の絵だと言われればそうだと納得してしまうようなろうたけた美しさだった｡思わず声をかけてしまいたくなる衝動が哲也を襲う｡ラブホテルの部屋にいるのだ｡もしかしたら､相手がいるのかもしれない｡そんな女性に声をかけるなど､相当な非常識だと自分でもわかっている｡しかしその時は､常識などけし飛んでしまうほど､その女性に心惹かれていたのだ｡｢あの､あなたは誰ですか?｣かなり間抜けな問いかけをした｡すると､わずかに女性が身じろぐ｡それで､マネキンでも絵画でもないとわかってほっとする｡どこか生身の人間とは思えないところがあったからだ｡とりあえず生身なら､この衝動の行きつく先に可能性が出てきた｡｢すいません｡あの､道に迷ったんですが…｣今度は至極､まともな質問を投げかける｡今度は女性が哲也の方へと顔を向けた｡視線がかち合う｡ああ､なんて美しいのだろう､と哲也は思わずため息を落とした｡
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