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3話:近くに

さらに話しかけようとしたところで、女性は部屋の奥へと消えてしまった。せっかく交流しようと思っていたのに、と哲也はへこむ。が、よく考えれば、やっぱり相手がいるのなら、当然の行動だろうとがっくりだ。しかし、道を聞かなくてはいけないのは本当のこと。哲也はとにかく、ラブホテルのスタッフでもつかまえて道を聞こうと入口を探した。入口は薄暗く、カウンターの人の顔が見えないようになっている。どこのラブホテルでもそういう仕様にしてあるのは、珍しいことじゃない。けれどそのホールの暗さは、ムードがいいというよりは、どこか寒々しい感じさえした。哲也は思わず自分の身体を自分でさする。まだまだ残暑厳しい時期だ。電気代をけちっているような暗さだから、クーラーが効きすぎているというようにも見えない。「あの〜すいません。道に迷ったんですけど」変だとは思いながらも、カウンターに呼び掛けた。おろされていたカウンターのシルクスクリーンがするするっとあがる。見ると、中にはさっき窓のところにいた女性が座っていた。「え?」どう考えても、上からここに降りてくる時間はなかったような気がする。けれど今は、女性がいることに興奮した。

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