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ラブホテル物語
砂漠の王子様とラブホテル
2話:退職勧告

しばらくしてようやく電車は走りだしたけれど、都は結局会社に遅刻した。当然、朝イチの謝罪にも間に合わず、ものすごい叱責の後に進退を迫られる。明日には自己都合退職か解雇かという選択をしなければいけない。それはどのみち無職になるということだ。都はため息をつきながら会社を出た。いつの間にか雨が降り出している。そぼ濡れて路地の間を縫って歩いて行く都は、素直に家に戻る気持ちにはなれなかった。仕事を辞めなくてはいけないなら、あのマンションも引き払わなくてはならないだろう。そんなことを考えていると、よけいに足が重くなる。そうすることで時間を止めてしまえるような気がしていたのだが、まさかそんなはずもない。「こんなことしてても会社を辞めさせられたことは変わらないのに」空を見上げると、真黒な雲からシトシトと銀の糸が振り切っている。それがきれいに見えた。きっと砂漠の民から見たら、恵みの雨に見えるだろう。そう思うと、今朝のキャラバンが目に浮かぶ。あのキャラバンのせいで失ったものは大きい。でもどうしてか憎む気にはなれなかった。「きっと別世界の出来事だからだわ」都はため息をついて、目を閉じた。そこで躓いてしまう。

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