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ラブホテル物語
![]() 3話:誠 気づくと、天井の鏡に自分が映っている。驚いて飛び起きた。まわりを見渡すと、どうやらラブホテルの一室らしい。「どうして?」と思っていると、浴室から出てくる音がして振り向いた。そこには濡れた髪を無造作に拭く見知らぬ男。「誰?」「あ、気づいたみたいだね。びっくりしたよ。急に僕の方に倒れるから」男は腰にタオルを巻いただけの格好で、さゆのいるベッドの端に腰かけた。「僕の名前は佐藤誠。債権者のひとりで、あそこにいたんだ。君は若いから、内定予定者かな?」内定という言葉にドキンとなる。うつむいて首を振った。「内定までいってません。ただ、もうすぐ最終面接の結果がもらえるはずで」「ああ」男の声に気の毒そうな響きが生まれる。それだけで、自分がみじめだと思った。「お風呂、まだ熱いから入っておいでよ。じゃないと、風邪ひくよ」誠は軽くそう促すと、冷蔵庫からペリエを取り出してラッパ飲みした。すぐに出て行ってもよかったのだが、どこか自暴自棄になっていたさゆは素直に浴室へと向かった。体があたたまると、生き返る気がする。そこで自分が将来によほど絶望していたと自覚する。たぶん、だから誠も放ってはおけなかったのだろう。 『フライングラブホテル』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]()
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ラブホテル物語![]() 3話:誠 気づくと、天井の鏡に自分が映っている。驚いて飛び起きた。まわりを見渡すと、どうやらラブホテルの一室らしい。「どうして?」と思っていると、浴室から出てくる音がして振り向いた。そこには濡れた髪を無造作に拭く見知らぬ男。「誰?」「あ、気づいたみたいだね。びっくりしたよ。急に僕の方に倒れるから」男は腰にタオルを巻いただけの格好で、さゆのいるベッドの端に腰かけた。「僕の名前は佐藤誠。債権者のひとりで、あそこにいたんだ。君は若いから、内定予定者かな?」内定という言葉にドキンとなる。うつむいて首を振った。「内定までいってません。ただ、もうすぐ最終面接の結果がもらえるはずで」「ああ」男の声に気の毒そうな響きが生まれる。それだけで、自分がみじめだと思った。「お風呂、まだ熱いから入っておいでよ。じゃないと、風邪ひくよ」誠は軽くそう促すと、冷蔵庫からペリエを取り出してラッパ飲みした。すぐに出て行ってもよかったのだが、どこか自暴自棄になっていたさゆは素直に浴室へと向かった。体があたたまると、生き返る気がする。そこで自分が将来によほど絶望していたと自覚する。たぶん、だから誠も放ってはおけなかったのだろう。 『フライングラブホテル』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]() #次のページ ![]() ![]() ![]() ![]() |