XHTML版 | HTML版 | DebugString | ||
ラブホテル物語
![]() 1話:敦の場合 今井敦は毎年、花見の時期が大嫌いだった。なぜなら、この時期外では花粉という見えない悪魔が飛んでいるからだ。やつらは風に乗って、敦の鼻を攻撃する。アレルギー症状を起こした今井は、またたくまにぐしゅぐしゅと鼻を鳴らし始め、やがてはくしゃみの連発に襲われ、両方の鼻がつまり、息苦しくなる。夜寝る時も苦しく、起きている時も口でしか息ができない。スーハースーハー言いながらしか食べ物を食べられないことの、なんと苦痛なことか。汁物をすすりあげている間、実質は息を止めているのだから、ひと口ごとに大きく息をしなければならない。こんな状態なので、夏に恋人が出来ても、次の春になると別れるはめになっていた。「汚い」「気持ち悪い」「かっこ悪い」というのが理由。普段イタリアンスーツを着て、ジゴロ風味(あくまで風味)に決めてナンパをしているので、春先のギャップに逃げ出す女は数知れずだ。だいたい、この季節にはテロンテロン素材のコートで、帽子をかぶり、ゴーグルのようなサングラスをし、ごっついマスクをして歩く。まるっきり不審者にしか見えない状態だ。ナンパもしないが、デートにその格好で現れれば逃げ出したくなるのもわかる。 『花粉症ラブホテル』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]()
※前のページ
#次のページ ![]() ![]() ![]() ![]() |
ラブホテル物語![]() 1話:敦の場合 今井敦は毎年、花見の時期が大嫌いだった。なぜなら、この時期外では花粉という見えない悪魔が飛んでいるからだ。やつらは風に乗って、敦の鼻を攻撃する。アレルギー症状を起こした今井は、またたくまにぐしゅぐしゅと鼻を鳴らし始め、やがてはくしゃみの連発に襲われ、両方の鼻がつまり、息苦しくなる。夜寝る時も苦しく、起きている時も口でしか息ができない。スーハースーハー言いながらしか食べ物を食べられないことの、なんと苦痛なことか。汁物をすすりあげている間、実質は息を止めているのだから、ひと口ごとに大きく息をしなければならない。こんな状態なので、夏に恋人が出来ても、次の春になると別れるはめになっていた。「汚い」「気持ち悪い」「かっこ悪い」というのが理由。普段イタリアンスーツを着て、ジゴロ風味(あくまで風味)に決めてナンパをしているので、春先のギャップに逃げ出す女は数知れずだ。だいたい、この季節にはテロンテロン素材のコートで、帽子をかぶり、ゴーグルのようなサングラスをし、ごっついマスクをして歩く。まるっきり不審者にしか見えない状態だ。ナンパもしないが、デートにその格好で現れれば逃げ出したくなるのもわかる。 『花粉症ラブホテル』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]() #次のページ ![]() ![]() ![]() ![]() |