ラブホテル物語
花粉症ラブホテル3話:出会い
今井敦と引田佑子は同じ会社の別の部署に勤めていた。だから、それまではお互いに存在を知らないまま5年ほど過ぎていた。ところが、今年、ふたりは思わぬことで出会うことになる。それは、年に一度、会社をあげての大花見大会の日。毎年、ふたりともそこは忌引きを使って回避してきた。ところが、今年はいよいよ名義上殺せる親族も底をついた。しかも、会社創立30周年とかで、絶対参加を厳命されたのだ。花粉症のふたりにとって、花見は鬼門だった。外で宴会など、この時期は狂気の沙汰としか思えない。幸い、会社が終わった夜にやるということで、そこだけは救い。それでも、花粉が乱舞する時期の長時間、外というのは決死の覚悟がいる。とりあえず、いつものコートにゴーグルにごっついマスクという出で立ちで参加した。すると、なぜか鏡に映った自分のような存在が前から歩いてくる。向うもそれは同じようで、まるで引き合う磁石のようにして、ふたりは歩みよった。「あの、僕は営業の今井敦といいます。花粉症歴20年です」「私は総務の引田佑子といいます。花粉症歴15年です」お互いに、まるでダースベーダーのようなズーハーズーハーという息の下から自己紹介。
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今井敦と引田佑子は同じ会社の別の部署に勤めていた。だから、それまではお互いに存在を知らないまま5年ほど過ぎていた。ところが、今年、ふたりは思わぬことで出会うことになる。それは、年に一度、会社をあげての大花見大会の日。毎年、ふたりともそこは忌引きを使って回避してきた。ところが、今年はいよいよ名義上殺せる親族も底をついた。しかも、会社創立30周年とかで、絶対参加を厳命されたのだ。花粉症のふたりにとって、花見は鬼門だった。外で宴会など、この時期は狂気の沙汰としか思えない。幸い、会社が終わった夜にやるということで、そこだけは救い。それでも、花粉が乱舞する時期の長時間、外というのは決死の覚悟がいる。とりあえず、いつものコートにゴーグルにごっついマスクという出で立ちで参加した。すると、なぜか鏡に映った自分のような存在が前から歩いてくる。向うもそれは同じようで、まるで引き合う磁石のようにして、ふたりは歩みよった。「あの、僕は営業の今井敦といいます。花粉症歴20年です」「私は総務の引田佑子といいます。花粉症歴15年です」お互いに、まるでダースベーダーのようなズーハーズーハーという息の下から自己紹介。
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