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ラブサスペンス
![]() 2話 「女子大生が殺されたのは、夜中の三時だったそうです」リーダーの男は、相変わらずメガホンで説明をつづけている。「ですからその深夜三時になると、この倉庫から哀しげなすすり泣きの声が聞こえてくるのだそうです」しかしそんな説明はもはや耳に入っていなかった。俺の全神経は、集団の最前列で、熱心そうにリーダーの話に聞き入っている、ひとりの美人に集中していた。きっとサークルの新入りだろう。今年の新入生かもしれない。いずれにしても、このサークルのメンバーに美人を見たのは、それが初めてのことだった。この手のサークルに入会する女といえば、丸眼鏡にそばかすの、さっぱり色気のない子や、魔女のような化粧を顔面にほどこした怪しげな子が大半だ。あんな清楚な感じの美人は珍しい。俺は迷わず、一直線に彼女に向って進んでいった。貴重な女には、早めに唾をつけておくに限る。「ねえきみ一年生?名前は?」俺が話しかけると彼女は、「え?」と振り返り、露骨な迷惑顔で眉をしかめた。「ちょっとなによ、説明が聞こえないじゃないの」なかなか生意気だ。ますます可愛げがある。「幽霊の説明なんかよりさ、俺とどこか別の場所に行こうよ」俺は彼女の耳元で、さんざん誘いの言葉を並べ立てたが、彼女は一向に俺の話を聞いてくれようとはしなかった。(ちくしょう)あきらめかけたそのとき、俺の耳は不意にリーダーの声に反応した。「ちなみにこの入り口のドアは開いていますが、絶対に中へ入らないでくださいね。僕はここの鍵を持っていませんので、閉じ込められてしまったら、朝まで幽霊と二人きりなんてことになってしまいますよ」 『心霊スポットで 』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]()
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