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ラブサスペンス
![]() 2話 私が邪な考えにとらわれるのを、誰も責めることはできないでしょう。何故といえば、そういったコトを考えてしまうきっかけは、日常のいたるところに転がっているからであります。例えば私は、誰かの結婚指輪を眼にするたびに、ある卑猥な想像をします。それはこんな理由からです。―ある日曜日。私の教会で若いカップルの結婚式が執り行われました。私は威儀を正し、厳かに式を進行しておりました。若いカップルが互いに誓いの言葉を述べ、いよいよ指輪の交換という段になったときです。緊張のためか、新郎のほうが事前に打ち合わせた式の段取りをすっかり忘れてしまい、いつまでたっても指輪を取り出そうとしません。参列したお客さんたちがざわつきはじめます。私はこれはまずいと思い、新郎に早く指輪を取り出すよう、ちらちらと眼で合図を送りました。しかし新郎は私の目線の意味がわからないらしく、きょとんとした表情で私を見返します。私は仕方なく、自分の指で輪をつくり、それをもう片方の指にはめる仕草をして見せました。すると新郎は「あ」と小さく声を上げ、ニヤリと笑って私にこうささやいたのです。「神父さん、それは今夜ですよ、今夜」…それ以来私は、誰かの結婚指輪を見るたびに、きまっておかしな想像をしてしまうのです。 『ある神父の告白』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]()
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ラブサスペンス![]() 2話 私が邪な考えにとらわれるのを、誰も責めることはできないでしょう。何故といえば、そういったコトを考えてしまうきっかけは、日常のいたるところに転がっているからであります。例えば私は、誰かの結婚指輪を眼にするたびに、ある卑猥な想像をします。それはこんな理由からです。―ある日曜日。私の教会で若いカップルの結婚式が執り行われました。私は威儀を正し、厳かに式を進行しておりました。若いカップルが互いに誓いの言葉を述べ、いよいよ指輪の交換という段になったときです。緊張のためか、新郎のほうが事前に打ち合わせた式の段取りをすっかり忘れてしまい、いつまでたっても指輪を取り出そうとしません。参列したお客さんたちがざわつきはじめます。私はこれはまずいと思い、新郎に早く指輪を取り出すよう、ちらちらと眼で合図を送りました。しかし新郎は私の目線の意味がわからないらしく、きょとんとした表情で私を見返します。私は仕方なく、自分の指で輪をつくり、それをもう片方の指にはめる仕草をして見せました。すると新郎は「あ」と小さく声を上げ、ニヤリと笑って私にこうささやいたのです。「神父さん、それは今夜ですよ、今夜」…それ以来私は、誰かの結婚指輪を見るたびに、きまっておかしな想像をしてしまうのです。 『ある神父の告白』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]() #次のページ ![]() ![]() ![]() ![]() |