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ラブサスペンス
バースデープレゼント1話 茂手泰造はときおり両親を怨むことがある。なぜといえば彼の両親は、彼がその生涯を通じて茂手という苗字で過ごさねばならないと承知していながら、泰造などという名を彼に与えたからである。茂手泰造。モテタイゾウ。モテタイぞう。彼は物心ついて以来、この自分の名前が嫌で嫌でしかたがなかった。もちろん仮に彼が、こんな名を持っているにもかかわらず女性に持てるというのであれば、それほど嫌ではなかっただろう。なぜなら洒落で済むからである。しかし彼は女性に持てない。だから洒落にならない。だから嫌なのである。―ただし彼は、女性にこそ持てないが、男性の友人は多かった。およそ世間では異性に持てない人は同性に好かれるものだが、彼もまた他聞にもれず、男にはけっこう好かれていたのである。同性の友人が多いのは良いことだ。特に彼のようにサラリーマン生活を送っている人間は、そのおかげで毎日をそこそこ楽しく過ごすことができている。愚痴を言い合ったり、飲みに出掛けたり。しかし、日々やはりどこか充実感に欠けるというのが、茂手泰造の正直な気持ちだった。今日は彼の二十五歳の誕生日だ。「といっても祝ってくれる彼女もいないしなあ」社員食堂の行列に並びながら、茂手泰造はひとり呟いた。ところが…。 『バースデープレゼント』の一覧へ ラブサスペンスの一覧に戻る
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