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バースデープレゼント
2話

のんびりと進む社員食堂の行列に茂手泰造が並んでいたそのときである。「つまらなそうな顔してるのね」不意に、彼に声をかけた者がある。鈴の鳴るような奇麗なその声に、茂手泰造は驚いて振り向いた。そして次の瞬間、石のように硬直した。「どうしたの茂手くん、変な顔して?」そう言って彼の顔を可笑しそうに見つめているのは、なんと秘書課の姫野曜子なのである。姫野曜子といえば社内でもっともファンの多い、すこぶるつきの美人。しかも性格も気さくで優しく、茂手泰造などは常日頃から、およそ一般人にこれ以上の理想的な女性はいるまいとさえ考えていた。その姫野曜子が茂手泰造に声をかけてきたのである。もっともこれまで会話を交わしたことがないわけでもないので、声をかけられたからといって別段驚くほどのことではない。しかしこうしてすぐ間近でじっと見つめられると、やはりどうしても硬直してしまう。「ねえ茂手くん、今日誕生日でしょう?」「え、あ、そ、そうだけど…」「プレゼントがあるの。今夜、時間ある?」あまりの予想外の展開に、彼は言葉を返すこともできない。「ポポロってレストラン、知ってるでしょう? そこで七時に待ってる。必ず来てね!」そう言って姫野曜子はくるりと背を向けると、人ごみの中へと消えていった。茂手泰造は口をぽかんと開けて、その後姿を見送った。

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