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バースデープレゼント
3話

「まさか、からかわれたんじゃあるまいな」約束の七時まであと十五分。指定されたレストランに向かって足を速めながら、茂手泰造は訝った。「あの姫野曜子が俺にバースデープレゼントなんて…そもそもレストランに行っても、彼女ほんとに来てるのか?」しかし彼女は来ていた。彼が到着したときには、彼女はすでにテーブルについていて、入り口のドアを通り抜けた彼の顔を見て嬉しそうに手を振ったのである。(これはすごいことだぞ)彼は思った。(姫野曜子と二人きりで食事ができるなんて)「ご、ごめんね待たせて」「ううん平気。さあ何を食べましょうか?」そういうわけで二人は食事をはじめた。茂手泰造は緊張のあまり上手く喋ることができなかったが、姫野曜子のほうが気を使って会話を盛り上げてくれたので、なんとか楽しい雰囲気をつづけさせることができた。途中でオーダーしたワインの酔いもあって、食事が終わる頃になると、茂手泰造はもう天国にでもいる気分だった。しかしそのわずか三分後、彼は天国の上にもさらに天国があることを知ったのである。「ねえ茂手くん」食事を終えて、姫野曜子が言った。「あたしの家に来てくれない。あたし茂手くんに、バースデープレゼントをあげたいの」少し照れたように彼を見上げるその表情に、彼はごくりと生唾を飲み込んだ。

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