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バースデープレゼント
5話

「そ、そ、そ、そ、そろそろいいだろうか?」五分後、茂手泰造は寝室のドアの前に立ち、右手でしっかりとノブを握っていた。いつでも飛び込める体勢だった。彼女は『少し経ったら来て』と言っていた。もうそろそろいいだろう。「ひ、ひ、ひ、姫野さん、僕、入るよ!」そう叫ぶなり、茂手泰造は勢いよく寝室に飛び込んだ。そして次の瞬間、火薬の破裂する音が室内に満ちて…「ハッピーバースデー!」「おめでとう!」「誕生日おめでとう!」そんな声があちらこちらから聞こえた。見れば寝室の中には、彼の同僚たちがクラッカー片手にあつまっているのであった。―しばしの放心のあと、茂手泰造はようやく了解した。これは自分を驚かせ、かつ喜ばせるための、同僚たちのプレゼントだったのだ。―さあ、そこで彼はどのような反応を見せたか。「いやあまいったなこりゃ、みんなありがとう!」と笑顔を見せたか。「驚かせるにもほどがある!」と腹を立てたか。それとも「嬉しいよ僕、嬉しいよ」と涙を流したか。じっさいは、そのどれでもなかった。彼はそのままくるりと背中を向けると、一目散に寝室を飛び出していったのである。なぜなら。―彼はそのとき素っ裸で、しかも直立した臨戦態勢の息子を片手でしっかりと握り締めていたからであった。

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