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ラブサスペンス
![]() 4話 小屋の外です。サンタさんと二人のちっちゃな天使が、橇を運んで楡のドアを出てきました。「はやく、はやく!」「まてまて。だめだよ、油をちゃんと塗らなきゃあ。こいつを塗るのと塗らないのとでは、カーブでのキレがまったく違う」「そうなんですか?」「そうさ。だからちゃんと塗らなきゃならないのさ。ほら、備えあれば憂いなしってね」サンタさんはポケットからぼろ切れを取り出すと、それに油をちょこっとつけて、橇のあちこちをゴシゴシグリグリとこすりはじめました。二人のちっちゃな天使たちは、しぶしぶその様子を眺めていました。「…なんか、てきとうにやってるみたいだよね」「…うん、僕も毎年そう思う」しばらくして、ようやくサンタさんは油塗りの作業を終えました。「よし、と」それからにやりと二人を振りかえって、「じゃ、行くか」「いやっほう!」「やったぜベイビー!」二人は手足をブンブン振りまわして大喜びです。「ほらほら、きたない言葉を使うんじゃないよ…まあいいや。じゃ、出発だ。おういトナカイ!トナカイやあい!」サンタさんが小屋を振りかえって大声を出すと、トナカイはおずおずと楡のドアから出てきました。「さあ、行くぞトナカイ!世界の旅に出発だ…ん?」サンタさんはトナカイの顔をのぞきこみました。「なんだい、その袋は?」見ると、トナカイはほこりまみれの布ぶくろをすっぽりと自分の鼻にかぶせているのでした。あれは物置にあった、古いリンゴの布ぶくろです。「おまえ、鼻をどうかしたのかい?」サンタさんは心配そうにトナカイを見下ろしました。二人のちっちゃな天使は、気まずそうに顔を見合わせました。トナカイは、だまって橇の前に歩いていくと、いつものように橇の皮紐を腰に巻きつけました。 『リンゴの布ぶくろ』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]()
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ラブサスペンス![]() 4話 小屋の外です。サンタさんと二人のちっちゃな天使が、橇を運んで楡のドアを出てきました。「はやく、はやく!」「まてまて。だめだよ、油をちゃんと塗らなきゃあ。こいつを塗るのと塗らないのとでは、カーブでのキレがまったく違う」「そうなんですか?」「そうさ。だからちゃんと塗らなきゃならないのさ。ほら、備えあれば憂いなしってね」サンタさんはポケットからぼろ切れを取り出すと、それに油をちょこっとつけて、橇のあちこちをゴシゴシグリグリとこすりはじめました。二人のちっちゃな天使たちは、しぶしぶその様子を眺めていました。「…なんか、てきとうにやってるみたいだよね」「…うん、僕も毎年そう思う」しばらくして、ようやくサンタさんは油塗りの作業を終えました。「よし、と」それからにやりと二人を振りかえって、「じゃ、行くか」「いやっほう!」「やったぜベイビー!」二人は手足をブンブン振りまわして大喜びです。「ほらほら、きたない言葉を使うんじゃないよ…まあいいや。じゃ、出発だ。おういトナカイ!トナカイやあい!」サンタさんが小屋を振りかえって大声を出すと、トナカイはおずおずと楡のドアから出てきました。「さあ、行くぞトナカイ!世界の旅に出発だ…ん?」サンタさんはトナカイの顔をのぞきこみました。「なんだい、その袋は?」見ると、トナカイはほこりまみれの布ぶくろをすっぽりと自分の鼻にかぶせているのでした。あれは物置にあった、古いリンゴの布ぶくろです。「おまえ、鼻をどうかしたのかい?」サンタさんは心配そうにトナカイを見下ろしました。二人のちっちゃな天使は、気まずそうに顔を見合わせました。トナカイは、だまって橇の前に歩いていくと、いつものように橇の皮紐を腰に巻きつけました。 『リンゴの布ぶくろ』の一覧へ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ホテル掲載依頼 ![]() #次のページ ![]() ![]() ![]() ![]() |